『哲学個人授業』を読む

哲学者・鷲田清一(わしだきよかず)は現代文の教科書でもお馴染みの、大学入試において現代文評論頻出作家のひとり。現職は大阪大学学長。
プラトンからデリダ九鬼周造まで、古今東西23人の思想家の<殺し文句>をとっかかりにしてその精髄に逼る鷲田と永江の対談は、内容のディープさほどは難解ではなく、いつの間にか魅き込まれて読み進めるのが愉しくなってくる。
大学入試(特に難関大入試)における評論攻略には、哲学・現代思想の教養も必須なため、そういう意味においても高校生にとって、まさに一読しておいて損はない一冊。
もともとこの本はルポライター永江朗(ながえあきら)鷲田清一から哲学について個人授業を受ける……という企画で雑誌「ミーツ・リージョナル」に連載された「哲学上方場所」を単行本化したものである。
当時「ミーツ・リージョナル」は京阪神圏限定のタウン情報誌でありながら、内田樹(うちだたつる)平川克美(ひらかわかつみ)清田友則(きよたとものり)などのかなり硬派なエッセイや対談を連載しており、関東の書店では通常手に入らないため、出版元の京阪神エルマガジン社から直送してもらい毎号読むのを愉しみにしたほどであったが、編集長が当時の江弘毅(こうひろき)から変わったのと同時にそれらの硬派エッセイはなくなり、ごくフツーのタウン情報誌になってしまったのが至極残念でならない。