エッセイ提出作品より

  • 大人の要件

「大人なんて大嫌いだ」と中学に入ってから特に強く思うようになった。それは、小学校までの「優しくて、強くて、頼れる大人」というものを一気に覆されたから。例えば、偉い人の前ではゴマをすったりしているのに、子供や生徒の前では物凄い悪態をついたり、とても苦しんでいる友達を救ってくれなかったり。そんな大人を見てしまったから。その頃の私は「なんで?」としか思えなかった。「なんで悪態を吐かれるの?」とか「なんであのコを助けてくれないの?」とか。理不尽とかいう言葉を知らない私には「なんで?」の連続だった。今、その頃の自分について振り返ってみると、やっぱり相手からしたら、「なんで?」と思う事ばかりだったと思う。自分の事を棚に上げてたなぁ、とつくづく思う。でも、その時はそう考えて、そう感じる事しかできなかった。今でも充分子供だけれど、もっともっと自分の事しか考えられない幼い子供だったんだなぁ、と思う。それが最近は、そういう理不尽な事を経験(?)をして良かったなと思うようになった。苦しくて辛くて毎日泣いてばっかりだったあの頃には、とてもそんな風には思える余裕はなかったけれど、高校生になって大人の世界も中学よりは広く見渡せるようになった今、あの頃が役に立っている。「高校生だから」と、バイト先やその他の大人の人に何度言われたかわからない。「大人だって、そんなに事を言える程、偉くないじゃん」と思う事もたくさんある。感情に任せてしまう時もある。でも、前よりはそんなにアツくならずに、その矛盾を見られるようになった気がする。そして、その矛盾を見てもきちんと対応できるように、少しずつ成長しようとしている自分がいる。私も、段々オトナになっているのかな、と思う。器の大きな大人、相手を理解できる大人、他人を許せる大人、自分を好きになれる大人、人に誇れる大人......。成りたい理想の大人像は高すぎて、てっぺんが見えない程高い。それに、大人の中にもコドモが居るくらいだから、子供の私がオトナになるっていう事はとても大変だと思う。でも、それに少しでも近づけるようにこれから成長してきたい。(NH)