無題

 言葉は単なるコミュニケーションの手段・道具ではない。世界の地平を拡げるためには言葉を獲得することが重要である。言葉によって深く思考することの愉悦、現代文を学ぶことの面白さを伝えたい。
 現代文では「何をどう教えたらいいか」という決まった「型」というものはなく、アプローチがバラエティに富んだ科目であり、教師の力量が試される。それぞれの生徒にとって、自分自身が生きるリアルな現在に引きつけ、テキストに自分自身にとっての意味を見いだしながら読解していく。生徒の既成概念を揺さぶって疑問を抱かせ、批評精神の醸成を図りたい。
 教師の立場としては、誰のためにこの仕事をしているのかという原点に立ち返り、生徒たちのためにどれだけ愛情と情熱を注げるか。四〇名の生徒が教室にいても常にひとり一人をまなざして真摯に語りかけることを心がけている。そのようなライヴ感を大切にした授業の結果として、教師が語りかけること全てが完璧に伝わらなくとも、目の前の生徒に授業を通じて「何か」が伝わればいい。